文:ローラ・ハウス

水玉の宇宙:草間彌生の作品を集めた美術館が東京にオープン

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今や時の人ともなった草間彌生。東京を拠点に活動し、水玉模様のかぼちゃやLED照明を閉じ込めた鏡張りの部屋などの作品で知られる、赤いおかっぱが印象的な芸術家は、88歳となった今も、すでに築き上げた名声に甘んずることなくその勢いはとどまるところを知りません。

鮮やかな色のリトグラフや無数の突起で覆われたオブジェ、カラフルな絵画作品など、すでに草間作品は世界各地の美術館に収蔵されています。しかし、この度、世界で最も人気の高い現役女性アーティストという地位にふさわしく、その名を冠した美術館がこの10月に東京にオープンし、世界的なコレクションが収蔵されることになりました。

美術館の内覧会に登場した草間彌生は、母国に美術館を設立した思いを語りました。「世界のいろいろな場所で闘い、その時代の中で生み出してきた私の作品、芸術活動を深く高くみなさまに昇華してほしい。その強い願いを伝えたいと思いこの美術館を建てました」

久米設計による現代的な5階建てのビルは、灯りをともしたランタンを思わせるデザイン。場所は活気あふれる新宿です。日本人の芸術作品への敬意は、古代建築の寺院にも、美術館の大胆な現代建築にも、伝統文化を守る場と世界を代表するモダンアートを展示する美術館という場のバランスのうちに非常によく表されています。それを踏まえると、草間彌生の美術館はまさに現代美術にふさわしい場所と言えるでしょう。

草間彌生美術館では、レクチャーやギャラリートーク、さまざまな草間作品の展示などを計画しています。観覧は90分の入れ替え制です。売り切れが予想されますので、事前にチケットを購入しておく必要があります。こけら落とし展では、最新絵画シリーズ『わが永遠の魂』をはじめ、モノクロドローイングのシリーズや、代表作であるかぼちゃ立体作品の新作などが展示されています。

「私の終生の念願であった草間彌生美術館を建て、みなさまに作品を見ていただきたいという心からの希望が達せられました。この草間彌生美術館に込めた思想や、すべての最愛なる人類へ捧げる愛を込めたわたしの一生と、生涯を通してきた芸術への努力の真情を見て、感じ取って頂ければこれに勝る喜びはありません」と、草間彌生は内覧会で語りました。

東京に常設美術館ができた今も、彼女の絵画作品やLEDで埋め尽くされた部屋のオブジェは世界のあちこちに存在しているようです。存在感が増している理由のひとつは、2017年2月にワシントンDCのハーシュホーン美術館でスタートした回顧展『Infinity Mirrors』が大きな注目を浴び、現在アメリカの5つの都市を巡回しているからでしょう。

この巡回展では、各会場で動員記録を更新し、ハーシュホーン美術館では、同館において過去40年で最大の観客動員数を記録、また、シアトル美術館では前売り券が発売と共に完売しました。ロサンゼルスの美術館、ザ・ブロードでは、プラチナチケットを手にした観客が、LEDで埋め尽くされた部屋の作品『Infinity Mirrored Room』で30秒間の恍惚に浸ろうと長い列を成しています。

80代の草間彌生の経歴そのものに、彼女の作品と同じくらい関心を寄せるファンが多いのもまた事実です。1929年に生まれ、長野県松本市で育った草間彌生は、幼いころから模様を描くことに取り付かれ、水彩やパステル、油絵で水玉や網目のモチーフを描き始めました。「10歳のころから絵を描き始め、今も1日たりとも描かない日はありません」と、内覧会のスピーチでも語っています。

苦難の多かった幼少期に幻覚を見るようになり、それが作品作りへと繋がっていったことを、草間本人はオープンに語っています。「幻覚は今も見えています。水玉があちこちに飛び交います。私の服や床、私の持ち物、部屋中あちこち、天井まで。それを絵に描くのです」と言います。

草間は、アーティストとして活動するため、1957年に日本を離れてアメリカへ渡り、大きな絵画作品や巨大なソフトスカルプチュアの制作や、ベトナム戦争反対の意を込めたパフォーマンスなどを行いました。アメリカやヨーロッパでの知名度を得て、1974年に帰国。高まる創作意欲の赴くままに、数年にわたって小説執筆に取り組んだ後、最終的には自らが最も基本とする絵画の制作に戻りました。

90年代になり日本での知名度がさらに上がると、海外でのファンも増え始めます。1995年にはロサンゼルスカウンティ美術館(LACMA)とニューヨーク近代美術館(MOMA)が共同で大規模な草間彌生の展覧会を開き、ミネアポリスと東京の美術館でも巡回展が開かれました。「草間彌生は、60年にわたり本物の革新性と個性を発揮しているアーティスト」と語るのは、内覧会に参加したArt Agency Partnersの共同創立者でサザビーズのグローバルファインアート代表も務めるアラン・シュワルツマン氏。「彼女は生涯をかけて、幅広いテーマを探ると同時に、限られた領域やテーマに対するさまざまな可能性も探ってきました」

これまでの作品を知っている人なら当然と思われることですが、草間彌生は美術館のあちこちに自らの手を加え、全体のデザインから展示方法まで、個性を発揮しています。「彼女は制作に対してあらゆるものを取り込んだ包括的なビジョンを持っています。それは彼女自身がつくり出す世界や宇宙です。草間彌生美術館は、さまざまな分野にわたる彼女のクリエイティビティを1つに集めた場所です」と、シュワルツマン氏は言います。

たくさんの水玉や限りない電飾に包まれた草間彌生の宇宙を、私たちはこの美術館で何度でも訪れることができます。「私の愛する人々や、世界平和を望むすべての人々へ、畏敬の念をより一層込めて私は人生のおしまいの日までこれからも闘い続けます」と、草間彌生は言います。

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