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世界に広がるフーコックの味

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豊かな海産物と漁村を中心に発展してきたベトナム・フーコック島。特にヌクマムの産地としてその名を知られています。塩辛くスパイシーな風味が特徴のヌクマムはベトナム料理には欠かせない調味料として、麺類の味付けからつけダレにまで、独特の旨味を加えています。中でも、フーコック島の職人の味レッドボート・フィッシュソースは、本物を求める1人の男性の熱意から生み出されて世界に広がり、今や世界各国のミシュラン星を獲得したレストランに使われるほどになりました。

Red Boat Fish Sauce

写真:Red Boat Fish Sauce

ヌクマムと言えば…

シャンパンと言えばフランス、オリーブはイタリア、ヌクマムはフーコック島。原産地とのつながりの強い食料品の保護のために欧州連合(EU)が定めた原産地名称保護(PDO)制度により、2012年フーコック島のヌクマムはその認定を受けました。PDOの認定を受けることで、「フーコック・ヌクマム」の名称で販売できるのは、フーコック島で生産し瓶詰めされた製品に限られることになりました。現地の原料を使い、現地の製法で作られた食品だけにその名称が与えられるのです。ベトナムの食品でPDO認定を受けたのはヌクマムだけ。パルミジャーノ・レッジャーノやハモン・セラーノ、シャンパンといった有名な地域ブランド食品の仲間入りを果たしました。

Sardines

写真:Red Boat Fish Sauce / Megan Fawn Schlow

レッドボート・フィッシュソースの始まり

フィッシュソース(魚醤)の起源は古くローマ帝国にまで遡ります。ガルムと呼ばれたイタリアのフィッシュソースは徐々に普及し、ついにシルクロードを経てアジアへと伝わります。ローマ帝国が崩壊すると、フィッシュソースの製造に欠かせない塩に高い税金がかけられるようになり、ヨーロッパでのフィッシュソースの人気が陰っていきました。このことが逆にアジアでの魚醤生産に拍車をかけ、中国で醤油のルーツが開発されるまで何千年にも渡って、主要な調味料として使われ続けました。中国や日本では醤油が主に使われるようになりましたが、ベトナムやタイを始めとする東南アジア地域では今も魚醤が使われています。

2005年にアメリカ在住のビジネスマン、クォン・ファム氏がフーコック島を訪れた際、数多くの市販のヌクマムが丁寧な製法で作られておらず、品質も低いことにショックを受けました。また、MSGなどの添加物を使って品質をカバーしたり、魚のアラやフーコック島以外でとれた魚を使うことで生産量を増やしたりしていることも問題でした。

クォン・ファム氏は、テクノロジー業界で25年のキャリアを築いたシリコンバレーを去り、ベトナムに帰国。かつて彼の叔父が作っていたような昔ながらのヌクマム作りに50万ドルの資金を投資し、小規模生産の伝統的なヌクマムを蘇らせてレッドボート・フィッシュソースというブランドが生まれました。

「本当に美味しいベトナム料理のエッセンスを多くの人に味わって欲しい」という彼の思いが製品になる過程において、最高のヌクマムが作られる場所として、フーコック島の名も世界に知られるようになりました。

Red Boat Fish Sauce

写真:Red Boat Fish Sauce

ヌクマムの新基準

レッドボート ブランドのコアの部分はあくまでシンプルに、天然のイワシをバリア産の塩を使って塩漬け発酵させ、魚の内臓に含まれる自然の酵素が塩と反応することでタンパク質が分解されるという、フーコック島で長い年月をかけて築き上げられてきた製法に立ち戻りました。

最も品質の高いヌクマムが採れるのは一番搾りです。中には、品質の劣る二番絞りを使う生産者もありますが、レッドボートでは「ヌクマム・ニー」と呼ばれる一番搾りしか使いません。その結果、業界で品質評価基準とされている、液体中のタンパク質含有比が全米で市販されているフィッシュソース中、最高値を誇る製品ができあがりました。

レッドボート社は現在、フーコック島に2カ所の醸造所を持ち、屋外の貯蔵庫には、現地産のボイロイ材製の朱色の樽190樽に14トンものイワシが塩漬けになっています。樽は魚の収穫日ごとにラベル付けされ、摂氏約36度で発酵させていきます。

Fish Sauce

写真:Red Boat Fish Sauce / Megan Fawn Schlow

世界に広がるフーコックの味

この製法でクォン・ファム氏が求めるクオリティの製品を作り上げるまでに3年の歳月を要しましたが、忍耐強く理想を追求する熱意が実を結び、今ではフーコック品質のヌクマムが世界中の消費者に届けられるようになりました。「フーコック島の名を、ベトナム人以外の人々に知ってもらえるきっかけにもなったと思います」とクォン・ファム氏は語ります。

確かにそれは事実でしょう。レッドボート・フィッシュソースはベトナムの家庭料理(昔ながらの本格的なヌクマムの味を求めるノスタルジーよる需要)の枠を飛び越え、ニューヨークのLe Bernardin、サンフランシスコのState Bird Provisionsなど、アジア料理に限らず様々な料理にヌクマムを使用するミシュラン星付きの名店にも採用されています。レッドボート・フィッシュソースを使う人は皆、無添加の純粋さが料理に複雑な深みを与えると口を揃えます。

現在では、コーシャー認定のフィッシュソース、メープルシロップ製造に使用されたケンタッキーバーボン樽で二重熟成させたChef’s Cuvee 2015に加え、Underbellyのクリス・シェパードといったセレブシェフのカスタムソースなど、数種類のバラエティを展開しています。

クォン・ファム氏の目標は、フーコック島の人気を取り戻すとともに、本格的なヌクマム・ニーを人々に届けて、アジア料理の枠を越えてヌクマムを使ってもらえるようになること。しかし、細部への気配りとクオリティへの熱意によって、彼はそれ以上のことを成し遂げたと言えます。ヌクマムに対する考えを大きく変えると同時に、ヌクマムの味にも革命を起こしたのです。

フーコック島でのレッドボート・フィッシュソースと本格的ベトナム料理を味わう旅なら、 InterContinental Phu Quoc Long Beach Resortのクラブインターコンチネンタルのご予約がお勧めです。ご滞在中のお食事のお勧めはクラブインターコンチネンタル専属スタッフにぜひお尋ねください。また、専用のクラブインターコンチネンタル ラウンジでのアフタヌーンティーやイブニングカクテル&カナッペの無料サービスなど、さまざまな特別サービスや特典をお楽しみいただけます。

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